好きになっちゃ、だめでしたか?

「ごめんごめん、こんなに笑う予定なかったんだけど」

 矢崎はひーとか言いながらようやく笑うのを止めた。

「予定って、笑うのに予定なんかないだろ」

「大野って、意外と頭かたいよね。勉強のしすぎ?」

「お前だって同じ進学校通ってんじゃん。お前こそ勉強しすぎで笑いのツボおかしくなってんじゃね?」

 矢崎が笑わなくなると、2人はこちらを向くのを止めてまた自分たちの世界へとはいっていく。

 あいつらは一体なんの話をしているんだろうか。あんなに口角を上げて、そんなに楽しい会話でもしているんだろうか。

「なに話してんだろうね」

 頭の中の文章と耳に聞こえてきた文章がぴたりと重なり、思わず矢崎を見ると「同じこと考えてた?」と今度は意地悪そうな顔で笑った。

 はあっとため息を吐くと「やっぱりね」と言われる。

 俺たちが学校の目の前で来るときには、2人は玄関の屋根の下にいた。

 留衣は自分のハンカチで神山の濡れた肩を拭きはじめる。神山が「ありがとう」と言っっているのが口の形から分かる。

 そのまま2人は同じクラスの靴箱の前で靴を履きかえる。

 そのとき、留衣の腕と神山の腕が当たる。

 留衣は神山のことをちらりと見て、けれど神山は特に気にしていない様子だ。

 留衣は顔を赤らめてさっと神山から目を逸らす。

 見ていられない、と思った。今すぐにでも白黒はっきりさせないといけない、と思った。

 俺は気付くと神山の隣に立って、声をかけていた、

「なあ、今日ちょっと時間ある?」

 神山は切れ長の目を丸くして俺を見ている。

 その隣で、神山の倍以上目を丸くしているのは留衣だった。