好きになっちゃ、だめでしたか?

 電車は、さっきのちょっとしたハプニング以外は特に問題なく走り、いつも通りに高校の最寄り駅に到着した。

 矢崎と2人で改札を抜けると、留衣たちが少し前を歩いているのが確認できた。しかも、神山の傘に2人ではいっている。道が狭いとはいえ、2人が同じ傘にはいっているのを見るのは……。 

 1人用の傘は2人を完全には雨から守っていない。

 神山の左肩が傘から出ていて雨に濡らされている。

 けれど留衣の身体は傘に守られていてほとんど濡れていない。

「でも実際さ、可哀そうなのか分かんないよね。でもわたしは、ちゃんと留衣を見てくれる人に恋人になってほしいな」

 と言う矢崎は俺のほうをちらりと見た。

「なんでそこで俺を見る?」

「いや、だから、大野みたいな、幼馴染みたいな? ていうか、幼馴染だからって、普通そんなに仲良くならないと思うけどね?」

「どういう意味」

「わたしにも家が近所で、昔はよく遊んでた男子いるけど、今では話もしないよ。普通そうじゃない?」

 と言われて、どうしてだか反論できない。それに、昨日妹に言われた言葉が頭に浮かんでくる。

 俺たちが話している間に、2人はどんどんと進んでいく。

 俺たちと2人の間にほかの学生がはいりこんできて、2人の姿がちらちらとしか見えなくなる。

 それでも、留衣の持っているカラフルな傘が2人のいる位置を知らせてくれる。

「だってさ、よく同じクラスなるし」

「ふうん? まあ、いいんだけどね。大野がいいならべつに」

「まさか、お前まで言うの? 俺が留衣のこと好きだって」

「なに、誰かに言われたの?」

「妹」

 と言うと、矢崎は朝から腹を抱えて、なにがそんなにおかしいんだと突っこみたくなるほどに笑いはじめた。雨でなんとなく暗い朝が、矢崎の笑い声で少しだけ明るくなる。とは言え、矢崎の声は大きすぎる。

 矢崎の笑い声に反応したのか、留衣たちが俺たちのことを見ている。

「恥ずかしいから声抑えろって。ほかのやつらも見てるし」

 留衣たちだけじゃない、矢崎の笑い声に周囲の人間の視線が隣にいる俺にまで突き刺さってくる。