好きになっちゃ、だめでしたか?

「へ~~? そうなんだ? じゃあなに? 英単語が覚えられなくて、吠えてるわけ?」

 矢崎はいかにも全てを見透かしたような目を俺に向けてくる。今考えている全てのことを読み取られなくて、目を逸らす。

「なんだよ、吠えてるって」

 矢崎はわざと隣の車両に目を向けて

「だからこっち向いて英単語帳見てるわけね。健気健気」

 と、背中を強く叩いてきた。

「まじで、好きとかそんなんじゃなくて。幼馴染だから心配してるだけだから」

「好き? 好きなの? なんて聞いてないですけど〜?」

「は? おま、だって、そう言いたかったんだろ?」

 矢崎の顔はますますにやけていく。

「ん〜いや、全然。ていうか、心配してるってことは、もしかして知ってるんだ? あのこと」

 矢崎の顔から急ににやけたものが消えて、ふっと息を吐くと眉を顰めた。

「神山の?」

 矢崎は下に向けた目を上げる。

「うん、やっぱ知ってるんだね」

 矢崎はちらりと2人のほうを見た。

 俺も同時に2人に目を向けると、そこにはやっぱり笑い合っている2人の姿があった。

 あの2人の笑顔は、本心からなのだろうか、それとも2人とも無理して笑ってるんだろうか。少なくとも留衣は……。

「大野はさ、どう思ってんの? 2人のこと。実際さ。幼馴染として」

「どうって、留衣はどう考えたって辛いだろ。告白されたのに、それが間違いだなんてさ。しかもあんな……顔のいいやつに」

「男子から見てもイケメンなんだ?」

「そりゃ、そうだろ。あんな顔。むかつくくらいかっこいいわ。って、うわ」

 急に電車が揺れ立っている人たちの身体が傾く。すぐに2人に目を向けると、留衣の腕を掴んでいる神山の姿が目にはいってきた。

 どくん、とした。けれど、なににどくん、としたのか分からない。

「急にびっくりしたね。ていうか、また2人のこと見てたんだ?」

「それは……」

「幼馴染として心配、だもんね?」

 矢崎もまた2人に目を向けている。

「神山ってさ、馬鹿だよな? 普通に考えてさ、間違えるか? あんな美人な人と留衣。どう見たって違うだろ。子どもの頃だって絶対、美人は美人なんだからさ」

「まあ、確かに。それは言えなくもないかもね」