次の日は雨だった。朝から湿気があってすっきりしない。
空がグレーのせいで街全体も朝なのに暗く、ため息を吐きたくなる日だ。
家を出て駅までの道を歩いていると、少し先に留衣らしき人物が歩いているのが見えた。
足早にその人物に近付いていき鞄を確認すると、やっぱり留衣だった。
「傘変えた?」
今までに見たことのない、カラフルな花柄の傘はころころと表情を変える留衣にぴったりだ。
「この前電車に忘れちゃって。新しいの買ったの」
「また傘忘れたのかよ。ったく、昔からよく傘忘れるよな。いや、壊すよな? 今まで何本傘買った?」
「もう、そんなに忘れてないし壊してない。まだたった……」
留衣は右手で数えはじめ、数秒後今にも消えそうな声で
「10本くらい」
と言った。
「結構だな」
「だって、傘って忘れちゃうじゃん? すぐ壊れちゃうじゃん?」
「まあ、確かにそうだけど」
どうでもいい話をしながら歩いていると、あっという間に駅に着く。
家から駅までの10分、留衣とどうでもいい話をしながら歩いてると、10分がいつも5分くらいに感じられる。
幼い頃からなにもないところでいきなり転んだり、急に走りだしたり、一緒にいると飽きない。
でも、そんなところが危なっかしくて一緒にいてあげないとと親みたいな気持ちになる。
ホームまで行くと、こんな雨なのに一人だけ発光しているかのような神山の姿が目にはいってきた。雨だというのにいつもと変わらないさらさらな髪、電気に照らされている女みたいな綺麗な肌。
留衣を見ると一瞬眉を顰め、しかし次には花が咲いたようにぱっと笑顔を作った。
「春樹君」
呼ばれた神山は、留衣と同じようにぱっと笑う。
「留衣、おはよう」
留衣は俺から離れて神山のもとに行ってしまう。2人は会話を交わしている。留衣は相変わらず笑顔を崩さず、また神山もいかにも好きなやつに向ける表情をしている。
こうして見ると、2人は立派な恋人だった。
俺と2人の間にほかの人間がはいりこみ2人の姿が見えなくなる。なぜだかそのことにほっとした。なんでほっとするのかは分からなかった。ただ、もう見ていたくないと思った。
2人とは別の車両に乗って朝の小テストの英単語帳をぺらぺらと捲る。
けれど頭に全然はいってこない。頭の中にあるのは、さっきの2人の笑った顔だった。
「あーもう」
と言った声は、まさかの同じ車両に乗っていた矢崎に聞かれていたようで。矢崎は口元をにやりとさせながら俺のところに来ると
「どうしたの? まさか、留衣のことで悩んでるとか?」
と、にやけた目を向けてきた。
「ち、ちげえし」
空がグレーのせいで街全体も朝なのに暗く、ため息を吐きたくなる日だ。
家を出て駅までの道を歩いていると、少し先に留衣らしき人物が歩いているのが見えた。
足早にその人物に近付いていき鞄を確認すると、やっぱり留衣だった。
「傘変えた?」
今までに見たことのない、カラフルな花柄の傘はころころと表情を変える留衣にぴったりだ。
「この前電車に忘れちゃって。新しいの買ったの」
「また傘忘れたのかよ。ったく、昔からよく傘忘れるよな。いや、壊すよな? 今まで何本傘買った?」
「もう、そんなに忘れてないし壊してない。まだたった……」
留衣は右手で数えはじめ、数秒後今にも消えそうな声で
「10本くらい」
と言った。
「結構だな」
「だって、傘って忘れちゃうじゃん? すぐ壊れちゃうじゃん?」
「まあ、確かにそうだけど」
どうでもいい話をしながら歩いていると、あっという間に駅に着く。
家から駅までの10分、留衣とどうでもいい話をしながら歩いてると、10分がいつも5分くらいに感じられる。
幼い頃からなにもないところでいきなり転んだり、急に走りだしたり、一緒にいると飽きない。
でも、そんなところが危なっかしくて一緒にいてあげないとと親みたいな気持ちになる。
ホームまで行くと、こんな雨なのに一人だけ発光しているかのような神山の姿が目にはいってきた。雨だというのにいつもと変わらないさらさらな髪、電気に照らされている女みたいな綺麗な肌。
留衣を見ると一瞬眉を顰め、しかし次には花が咲いたようにぱっと笑顔を作った。
「春樹君」
呼ばれた神山は、留衣と同じようにぱっと笑う。
「留衣、おはよう」
留衣は俺から離れて神山のもとに行ってしまう。2人は会話を交わしている。留衣は相変わらず笑顔を崩さず、また神山もいかにも好きなやつに向ける表情をしている。
こうして見ると、2人は立派な恋人だった。
俺と2人の間にほかの人間がはいりこみ2人の姿が見えなくなる。なぜだかそのことにほっとした。なんでほっとするのかは分からなかった。ただ、もう見ていたくないと思った。
2人とは別の車両に乗って朝の小テストの英単語帳をぺらぺらと捲る。
けれど頭に全然はいってこない。頭の中にあるのは、さっきの2人の笑った顔だった。
「あーもう」
と言った声は、まさかの同じ車両に乗っていた矢崎に聞かれていたようで。矢崎は口元をにやりとさせながら俺のところに来ると
「どうしたの? まさか、留衣のことで悩んでるとか?」
と、にやけた目を向けてきた。
「ち、ちげえし」



