「で、本当のこと、知りたいって思ってんの?」

 そうだ、わたしはまだ本当のことを知らない。でも、きっと99パーセントわたしの考えている通りだとは思っている。

「本当のこと……。分からないけど、でも、このままじゃダメなことくらいは分かる」

 春樹君の口から、ごめん、という言葉が出てくるのがきっと怖いだけ、そんなこと分かっている。

「だよなあ。本人に聞いてみたら? 直接さ。本当はその理系クラスのやつが好きなのか」

 それが一番いいことだっていうのは、蒼に言われなくても分かっていた。

 でも、もしるいさんのことを好きだと、真面目な顔で言われたら? るいさんが好きだから別れてほしいって言われたら?

 そしたらわたし、立ち直ることができるの?

 視線が落ちて、唇は無意識のうちに前歯で噛んでていて、手も強く握りしめられていた。

 聞くのが一番いい、事実を知るならはやいほうがいい。そんなの、ずっとずっと前から理解している。

「俺がいるだろ」

 蒼はまるでわたしの心の中を読んでいるかのように声をかけてきた。

「え?」

「さっきも言ったけど、パフェ奢ってやるから」

「蒼……」

 蒼は、ったく、そいつもそいつだよな、と独り言をぶつぶつと呟いている。ときどき、わたしの代わりのようにはーっとため息を吐いて、自分の髪の毛を自分の手で乱している。

「もう少し、考えてみる。もしかしたら、先に春樹君になにか言われるかもしれないけどね」

 春樹君に「話がある」って言われるのを想像しただけで胸が痛む。

 もし、別れて欲しいって言われたら?

 間違ってわたしに告白しちゃったから、別れて欲しいって言われたら?

 でも、あんなに優しい春樹君がそんなことを言うのが想像できなかった。

 きっと春樹君のことだから、自分から言うことはないんだろう。自分から人を傷付けるようなことはきっとしない。

 1カ月くらい春樹君と過ごしてみて、春樹君の優しさに気付いてしまったんだ。

 笑ってこっちを見る春樹君の優しい顔を、好きになってしまったんだ。