次の日、春樹君から見えないようにうしろの扉から教室にはいる。
音を立てないように椅子に座ろうと思うと、蒼が話しかけてこようとしたので口を人差し指で抑えた。
蒼は声を出さずに「は?」と口の形を変え、わざと腕を上げながら肩を竦める。
無事に席につけたと思うと出てくるのはため息ばかりで
「朝から陰気くせえな」
と蒼に小声で突っ込まれてしまった。
「いいよね、蒼はいつも楽しそうで。わたしの辛さなんてきっと理解できないんだよ」
蒼に顔を近づけると、ふんわりと石鹸の香りがする。
蒼のくせにいい香りして、と心の中で突っこむ。
「はあ、なんだよ?」
「わたしだって、ため息吐きたくて吐いてるわけじゃないんだから」
席から見える春樹君は、女子みたいに頬杖ついて前を見ていた。
ここじゃないどこかに意識が飛んでいて、普通に蒼と話していてもわたしの声なんか聞こえないかもしれない。
ねて、今どんなこと考えてるの?
体育祭のこと? 今日の授業のこと?
わたしのこと? ううん、きっとそれはない。
やっぱり……初恋の相手のこと?
見ていると、春樹君がふとこちらを向き目が合ってしまった。
思わず、繋がれた視線を自分から切る。
数秒後にもう一度ちらりと見ると、春樹君はすでに前を向いていた。
絶対変に思われた、どうしようって思うのに、春樹君はわたしのところに来さえしない。
もう、わたしのことなんてどうでもよくなったのかもしれない。
「悩みあんなら聞くけど? 幼馴染のよしみで」
今度は蒼から顔を近づけてくる。ちらりと、春樹君がわたしたちに目を向ける。
「ほんとに聞いてくれる?」
蒼の石鹸の香りが今はすごく落ち着く。
「まあ、な」
「じゃあ、昼に音楽室で、いい?」
「音楽室?」
「あそこいつも開いてるし、人来ないから」
秘密の話をするには、音楽室はどんな教室よりも相応しかった。
「分かった、音楽室な」
音を立てないように椅子に座ろうと思うと、蒼が話しかけてこようとしたので口を人差し指で抑えた。
蒼は声を出さずに「は?」と口の形を変え、わざと腕を上げながら肩を竦める。
無事に席につけたと思うと出てくるのはため息ばかりで
「朝から陰気くせえな」
と蒼に小声で突っ込まれてしまった。
「いいよね、蒼はいつも楽しそうで。わたしの辛さなんてきっと理解できないんだよ」
蒼に顔を近づけると、ふんわりと石鹸の香りがする。
蒼のくせにいい香りして、と心の中で突っこむ。
「はあ、なんだよ?」
「わたしだって、ため息吐きたくて吐いてるわけじゃないんだから」
席から見える春樹君は、女子みたいに頬杖ついて前を見ていた。
ここじゃないどこかに意識が飛んでいて、普通に蒼と話していてもわたしの声なんか聞こえないかもしれない。
ねて、今どんなこと考えてるの?
体育祭のこと? 今日の授業のこと?
わたしのこと? ううん、きっとそれはない。
やっぱり……初恋の相手のこと?
見ていると、春樹君がふとこちらを向き目が合ってしまった。
思わず、繋がれた視線を自分から切る。
数秒後にもう一度ちらりと見ると、春樹君はすでに前を向いていた。
絶対変に思われた、どうしようって思うのに、春樹君はわたしのところに来さえしない。
もう、わたしのことなんてどうでもよくなったのかもしれない。
「悩みあんなら聞くけど? 幼馴染のよしみで」
今度は蒼から顔を近づけてくる。ちらりと、春樹君がわたしたちに目を向ける。
「ほんとに聞いてくれる?」
蒼の石鹸の香りが今はすごく落ち着く。
「まあ、な」
「じゃあ、昼に音楽室で、いい?」
「音楽室?」
「あそこいつも開いてるし、人来ないから」
秘密の話をするには、音楽室はどんな教室よりも相応しかった。
「分かった、音楽室な」



