本当に、こんな人が自分の恋人だなんて信じられなくて、わたしは何度か強く瞬きをした。
だけど春樹君が隣にいるのは変わらなくて、もう一度強く瞬きをした。
「留衣、目にゴミでもはいった?」
「う、ううん」
春樹君はもう一度窓の外に目を向けた。
「大野君とは……ずっと仲良いの?」
春樹君は空をじっと眺めている。
「中学で2年間も同じクラスで、いっつも弄られてたよ。付き合ってるって噂されたり、そのせい、じゃないと思うけど好きな人にフラれるし」
違うって言ってもクラスメイトはにやにやして、ちゃんと話を聞いてくれなかった。
今思うと懐かしい思い出だ。
「好きな人、いたんだ」
春樹君の口から、予想もしていなかった言葉が出てきた。
「う、うん。ひ、1人ね。春樹君は?」
春樹君は、空からわたしに目を向けたのだけれど、瞳が少しだけ寂しそうだった。
「僕は、ずっと留衣のこと考えてた。告白されたときもあったけど、断ってたよ。いつか留衣に会うんだーって思って。って、重いよね」
「そ、そんなことない」
「ていうか、帰ろうか」
「あ、うん」
春樹君が先に動き出す。わたしはそんな春樹君のあとを追う。
門を出ると春樹君はわたしの隣に来て、手を繋いでくる。
春樹君の手はわたしの冷たい手と違って暖かくて、少し筋肉質で、はじめて男子と手を繋いだのが春樹君だなんて今でも信じられない。
四十分くらい、好きなものとか行きたいところとかそんな話をしているうちに家に着いてしまった。
「ここ、うち」
「すぐ、着いちゃったね」
「あ、うん。駅から家、近いよね」
「もっと二人でいたかった」
わ、わたしも、と言おうとしたとき「おーい、お前ら家の前でもいちゃついてんの?」と蒼がちょうど帰ってきた。
蒼は遠慮なんて見せずにわたしたちの隣に立つ。
「あ、蒼こそ、電車ずらすとかしてよ」
「は? 意味分からん」
なんでお前らのために? とわたしと春樹君の顔を交互に見た。
「え、っと、大野君の家って」
「蒼は、隣に住んでるの」
あ、そうなんだ、と、春樹君は蒼に視線を移すけれど、蒼は春樹君を見ようとせず、そのまま家にはいっていった。
蒼の背中が見えなくなると、春樹君は
「隣、だったんだ」
と、独り言のように呟く。
「うん、家同士も仲良くて。小さい頃はお風呂一緒にはいったりして、兄弟みたいな感じだよ」
「そっか、お風呂まで」
「って、今はもちろん違うよ!?」
「分かってるよ。今もだったら……」
春樹君は一瞬、とんでもなくダークな表情を見せた。
けれど次の瞬間には、じゃあ、僕これから習い事だから、と言い、春樹君はどこか作ったような笑顔を浮かべて、来た道を戻って行った。
だけど春樹君が隣にいるのは変わらなくて、もう一度強く瞬きをした。
「留衣、目にゴミでもはいった?」
「う、ううん」
春樹君はもう一度窓の外に目を向けた。
「大野君とは……ずっと仲良いの?」
春樹君は空をじっと眺めている。
「中学で2年間も同じクラスで、いっつも弄られてたよ。付き合ってるって噂されたり、そのせい、じゃないと思うけど好きな人にフラれるし」
違うって言ってもクラスメイトはにやにやして、ちゃんと話を聞いてくれなかった。
今思うと懐かしい思い出だ。
「好きな人、いたんだ」
春樹君の口から、予想もしていなかった言葉が出てきた。
「う、うん。ひ、1人ね。春樹君は?」
春樹君は、空からわたしに目を向けたのだけれど、瞳が少しだけ寂しそうだった。
「僕は、ずっと留衣のこと考えてた。告白されたときもあったけど、断ってたよ。いつか留衣に会うんだーって思って。って、重いよね」
「そ、そんなことない」
「ていうか、帰ろうか」
「あ、うん」
春樹君が先に動き出す。わたしはそんな春樹君のあとを追う。
門を出ると春樹君はわたしの隣に来て、手を繋いでくる。
春樹君の手はわたしの冷たい手と違って暖かくて、少し筋肉質で、はじめて男子と手を繋いだのが春樹君だなんて今でも信じられない。
四十分くらい、好きなものとか行きたいところとかそんな話をしているうちに家に着いてしまった。
「ここ、うち」
「すぐ、着いちゃったね」
「あ、うん。駅から家、近いよね」
「もっと二人でいたかった」
わ、わたしも、と言おうとしたとき「おーい、お前ら家の前でもいちゃついてんの?」と蒼がちょうど帰ってきた。
蒼は遠慮なんて見せずにわたしたちの隣に立つ。
「あ、蒼こそ、電車ずらすとかしてよ」
「は? 意味分からん」
なんでお前らのために? とわたしと春樹君の顔を交互に見た。
「え、っと、大野君の家って」
「蒼は、隣に住んでるの」
あ、そうなんだ、と、春樹君は蒼に視線を移すけれど、蒼は春樹君を見ようとせず、そのまま家にはいっていった。
蒼の背中が見えなくなると、春樹君は
「隣、だったんだ」
と、独り言のように呟く。
「うん、家同士も仲良くて。小さい頃はお風呂一緒にはいったりして、兄弟みたいな感じだよ」
「そっか、お風呂まで」
「って、今はもちろん違うよ!?」
「分かってるよ。今もだったら……」
春樹君は一瞬、とんでもなくダークな表情を見せた。
けれど次の瞬間には、じゃあ、僕これから習い事だから、と言い、春樹君はどこか作ったような笑顔を浮かべて、来た道を戻って行った。



