好きになっちゃ、だめでしたか?



「花坂……るいです」
 
 名前を言ったあと、わたしは小さく息を吐いた。肩から少しだけ力が抜け、身体が楽になる。

「るい……さんですね。もしかして、昔会ったことありますか?」

 彼は目を真っすぐにわたしに向けて、1番訊いてほしかった質問を投げかけてきた。

「あ、えっと……春樹君、ですよね? 昔、遊んだことある」

 春樹君は、目を大きく見開いてわたしを見た。

「やっぱり、そっか、るいちゃんだったんだ。昔と全然変わらない姿で、でも、まさかって思って」

 さっきまで他人行儀だった春樹君の顔が一気に崩れ、目の前にはあのときの春樹君そっくりの彼がいる。

 そう、この笑顔をもう1度向けてほしかった。

「うん、そうだね。春樹君もあのときから変わらないね。あのときは、遊んでくれてありがとう。初対面のわたしを励ましてくれてありがとう。でも、今は他に友達もいて、春樹君がいなくても元気にやってるよ」

 本当はこんなことを言いたいわけじゃない、ずっとずっと会いたくて、ようやくこうして会えてとても嬉しい。

 素直にそう言いたい。

 けれど自分を守るためには、春樹君から精神的に離れるしかない。