好きになっちゃ、だめでしたか?

「るい、もしかして、いたの?」

 耳元でめいが、絶対誰にも聞こえないくらいの声の大きさで訊いてくる。

 めいの息が耳にかかってくすぐったい。

 わたしはめいの目を見て「うん」と深く頷いた。

「どの人?」

 めいは、教室を見渡している。

「あの、一番前の人」

 春樹君を見ると、めいの目も彼をとらえた。

「え、あの人? あのかっこいい人?」

 まんまるの目をさらに丸くしてわたしの顔を見る。

「え、ああ、うん、かっこいい、かな?」

 大人っぽくはなったけれど、幼少期の面影を強く残している春樹君のことを、今さらかっこいいとは思わなかった。

 でも確かに、春樹君はかっこいい分類にはいるのかもしれない。

「めっちゃかっこいいよ。わたしこの教室はいったとき、めちゃくちゃかっこいい人だなあって思ったんだよ」

 と、長い間2人でこそこそ会話をしていると、教師はわたしたちのことを睨みながら喉を鳴らす。

 2人で、すみません、と言いながら笑ったとき、春樹君がこっちを見た。