好きになっちゃ、だめでしたか?

 早速、7限のロングホームルームの時間、わたしたちはそれぞれあてがわれた教室へと行く。

 普通科の校舎にくることは滅多になく、まるで違う高校にいる気分になった。

 知らない顔ばかりで、この時点で不安に押しつぶされそうになる。

 3組の教室まであと少しで、近づいていくごとに心臓の動きがはやくなる。

 意識的に息を吸って、はやすぎる心臓の鼓動をなんとか抑えようとした。

 春樹君と同じがいい、だけど、春樹君が他の人に笑顔を向けるのを見るのは辛い。

 そしてついに、3組に到着する。

 教師に言われて前の扉からはいろうとしたとき、1番前の席に座る春樹君の姿がめにはいってきた。

 まさか、本当に春樹君のいるクラスにくるなんて、思ってもみなかった。

 春樹君は窓の外をぼおっと見ていて、わたしたちにはほとんど目を向けていない。

 確かにその人は春樹君で、どう見ても春樹君で、教室のべつのところにいる彼女もまた目にはいってきて。

 特に自己紹介をすることなく、わたしたちはまるでよそ者のように教室の後ろに並べられている椅子に座る。

 ここからだと、春樹君のうしろ姿がはっきりと見える。

 見たくなくても、ほとんど中央にいる彼を視界にいれずにいるのは困難だった。

 春樹君、わたし、あのときのるいだよ、そう言ってしまいたい。あのとき、公園で話しかけてくれたよね、わたしすごく救われたんだよ。

 でも、今更だ……彼女がいる春樹君にそんなことを言ったって困らせるだけだ。