好きになっちゃ、だめでしたか?

「だけど、もしそうだとしても、春樹君笑ってたの。その人の隣で、すごく楽しそうに。勘違いだとしても、そこからはじまる恋だってあるじゃない?」

 めいは再び視線をコップに移動させて「まあ、確かにね」と静かに呟いた。

 再びわたしたちの間に沈黙が流れる。ピアノの音楽がいい具合に沈黙を埋めてくれ、少しだけ気持ちが楽になる。

 でも、もしめいの言う通り、本当はわたしのことを好きで、勘違いでその人と付き合っているとしたら。

「春樹君に会いたい。ちゃんと会って話したい」
 
 一番強く思っていることが、つい声に出てしまった。

 めいを見ると、わたしを見て何度も、うん、うん、と言っている。

「そう、だよね。うん、それが当たり前だと思う。でも」

 めいが唾を飲みこむ音が、わたしの耳まで聞こえてくる。ゆっくりと口を開いて、言葉を紡ぐ。

「傷付かない? るいが余計に傷付く姿、わたしは見たくない。もし、わたしの推理が正しかったとしても、るいが言うように、今はその人のことを好きになったって言うのもあると思うし」

 めいは言ったあとに、ごめん、と小さな声で謝ってきた。

 めいはいつだってわたしのことを最優先に考えてくれる。

 それに、もし勘違いだとして、春樹君がすぐに彼女と別れる?