「春樹君、彼女いたんだ」
ようやく、一番伝えたかったことを口に出せた。けれど、口に出したら最後、事実はわたしを丸ごと飲みつくそうとしてくる。
めいはなにも言わずにわたしから目を逸らしてテーブルの上のコップを見た。
なんて言ったらいいのか分からないことくらい、わたしにだって分かる。
もし自分がめいの立場なら、わたしだってどんな言葉をかけていいのか分からない。
「そう、なんだ」
めいの声は掠れていた。
「るいって呼んでた。その人のこと、るいって」
「るい?」
その瞬間、めいの顔がさっきまでの悲壮に溢れるものではなく、なかなか解けない問題を目の前にしたような表情になる。
「うん」
めいはコップに向けていた視線を再び天井に向けて数秒なにかを考えて口を開いた。
「多分だけど、その春樹君っていう人、るいとその人を間違ってるんじゃないかな?」
めいは、まあ、と唇を尖らせてまるで名探偵のように腕を組む。
「わたしとその人を間違ってる?」
「うん、多分だけど、本当にただの妄想なんだけど、春樹君は多分ずっとるいに会いたくて、それで偶々同じ名前の人が近くにいて、その人をるいと勘違いしちゃってるんだよ」
めいは、自分の推理が正しいだろうと言わんばかりに何度も頭を振る。
確かに、そういうことも考えられるかもしれない。
ようやく、一番伝えたかったことを口に出せた。けれど、口に出したら最後、事実はわたしを丸ごと飲みつくそうとしてくる。
めいはなにも言わずにわたしから目を逸らしてテーブルの上のコップを見た。
なんて言ったらいいのか分からないことくらい、わたしにだって分かる。
もし自分がめいの立場なら、わたしだってどんな言葉をかけていいのか分からない。
「そう、なんだ」
めいの声は掠れていた。
「るいって呼んでた。その人のこと、るいって」
「るい?」
その瞬間、めいの顔がさっきまでの悲壮に溢れるものではなく、なかなか解けない問題を目の前にしたような表情になる。
「うん」
めいはコップに向けていた視線を再び天井に向けて数秒なにかを考えて口を開いた。
「多分だけど、その春樹君っていう人、るいとその人を間違ってるんじゃないかな?」
めいは、まあ、と唇を尖らせてまるで名探偵のように腕を組む。
「わたしとその人を間違ってる?」
「うん、多分だけど、本当にただの妄想なんだけど、春樹君は多分ずっとるいに会いたくて、それで偶々同じ名前の人が近くにいて、その人をるいと勘違いしちゃってるんだよ」
めいは、自分の推理が正しいだろうと言わんばかりに何度も頭を振る。
確かに、そういうことも考えられるかもしれない。



