めいはわたしを駅の近くの住宅街のカフェまで連れて行ってくれた。

 隠れ家的なカフェにはわたしたちともう一組しか人がいない。

 店内にはピアノの音楽が流れていて、気持ちをすっと軽くしてくれると同時に、その優しさにもっと心臓が締めつけられる。

「どうしたの? 本当に」

 めいの穏やかな口調に、抑えようとしていた涙が一気に溢れ出てきて、声を出そうとするのに震えて声にならない。

 春樹君のことを話そうとすると、朝の2人の光景が脳に思い浮かんで来て心を締め付けてくる。

 苦しい。

 水の中にいるときみたいに息ができない。

「ほら、ゆっくり深呼吸」

 めいに言われるままに、息を吸って、吐いて、吸って、吐いた。

 そしたら少しだけ、気持ちが楽になる。

「で、どうしたの? そんな風になるなんて、よっぽどのことだよね?」

「春樹君が、いたの。同じ学校に」

 めいは、え、と声をだして目を丸くする。

「春樹君って、いつも言ってる春樹君?」

「うん、その春樹君」