高校に入学してはじめての試験だったのに、大切な試験だったのに、全然集中できなかった。

 近くにあの春樹君がいるという胸の高揚と、すでに彼の隣には可愛らしい彼女がいることへの悲壮。

 同じ、るい、という名前の彼女。

 もしわたしのほうが先に春樹君と再会していたら、今頃隣にいるのはもしかしたら……。

「るい、帰ろ」

「う、うん」

 立ちあがろうとすると脳がぐるんと回る。一瞬ふらつく。

 まるで何日も寝ていないときのように頭が重い。

 なんでわたしじゃないの? 理科よりも数学よりも難しい問いに悩みつづけている。 

「大丈夫? るい」

「大丈夫……じゃないかも」

 心の中に溜まっていた思いを言葉にすると、目の奥が熱くなって涙が出てくる。

 止めないとと思うのに、自分の意思とは反対に感情が押し寄せてくる。

 教室にはまだクラスメイトが何人も残っているんだから、こんなところで泣いちゃいけないのは分かっているのに。

 クラスメイトが笑っている声を聞くと、どうして自分は、と心臓が手で掴まれたように痛くなる。

「るい? るい、どうしたの」

「ごめん」

 めいの少し冷たい手がわたしの手を握ってくれた。

 今のわたしには、その手がどんなものよりも温かい。

「とにかく、学校から出てどこかで話そ?」

「うん……」