1週間、結局毎日春樹君と帰宅している。

 昼休み、一華と昼食を食べているとき「なんか、神山君、すっごい留衣のこと好きじゃん。他の女子にはほとんど無表情なのに、留衣だけにはめちゃくちゃ笑うし。クラスの人たちも、もはや天然記念物、みたいな感じで神山君のこと見てるよ」と言われる。

「そ、それは」

「でも、留衣は忘れてるんだよね? 幼い頃に遊んだっていうの」

「本当に、思い出せなくて。蒼の、記憶しかない」

 と言うと一華は、ぷっと笑いを漏らす。

「どんだけ大野とばっかいたの」

「そ、それは。なんていうか、蒼優しかったから」

「まあ。確かに幼い頃ちょっとだけ遊んだ相手のことなんて、わたしも全然思い出せない」

 どうしても、いくら考えても、春樹君のことを思い出せない。

 他の子と遊ぶときは、いつも蒼の背中に半分くらい隠れていた。

 いつも蒼を通してじゃないと、他の人と遊べなかったから。

「まあ、いいじゃん。記憶なくても、今はあんなに好きでいてくれるんだし」

「そ、そうだよね」

 春樹君の顔を思い浮かべるだけで、心臓がどきどきとはやく動きはじめる。

「羨ましい限りです」
 
 と、一華はわたしに向かって手を合わせ祈りはじめた。