「神山とたくさん話せた?」

「え?」

「いや、ここ数週間、ちゃんと話せたかって。神山が留衣のことちゃんと好きって知って、留衣だって安心しただろ?」

 蒼は今にも泣きそうな顔をしているのに、むりやり笑っている。わたしの顔は? 蒼の目にはどう映ってる?

「うん……たくさん話したよ」

「そっか、よかった」

 よかったって、どういう意味? 聞きたいのに聞けない。

「じゃあ、そろそろ行くわ。ちゃんと夕食食べろよ」

「食べてるよー、蒼も勉強のしすぎで倒れないようにね」

「こんなの楽勝楽勝。受験のときに比べたら」

 じゃ、と言い、蒼は背を向けてさっき話していた人たちのところに戻っていった。

 蒼の今の気持ちが知りたかった。

 本当にわたしのことをもう好きじゃなくなったのか、今どんな思いを抱えているのか。わたしが春樹君の恋人になることを望んでいえるのか。

「留衣っ。ご飯食べよ」

 一華がいつの間にか隣にいて、頭をポンポンって撫でてくる。

「顔に出すぎ」

 今度は頬をつっついてくる。

「えっ、わ、わたしどんな顔してた?」

「んー? 秘密」

 一華はにやにやしながら腕を掴んで、席へと引っ張っていく。

 途中、春樹君と目が合った。手を振ってくれて、だけどわたしは笑いかけるのが精一杯だった。