あれから蒼とは微妙に距離ができてしまった。話しかけてもすぐにどこかに行っちゃうし、登校時間もわざとずらしているようだった。

 選択授業もあまり被らなくて、蒼に会ってから一番心の距離を感じた時間だった。

 反対に春樹君とはたくさん話をした。

 どこかにデートに行ったわけではないけれど、休み時間とか帰りの時間に何気ない話をたくさんした。

 春樹君は相変わらず優しい。わたしのことをいつも考えてくれて、一緒にいると安心できる。

 そして今日からは3泊4日の勉強合宿がはじまる。場所は山に囲まれたホテルで、自然以外はほとんどなにもない。どうやらスキー場のようで、もちろん夏の今は雪は一ミリも積もっていない。

 だけど温泉があって、夜は好きにはいってもいいということだった。

 それに、授業と自習時間以外は縛られていなくて、少しホテルの周辺を散歩したりもできる。

 今日1日目の午前中は移動時間で、今はホテルで昼食を食べたばかりだ。

「はーっ。今日から勉強づくしの1日かあ」

 なんて隣で背伸びをしているのは一華で。

「まあ、でも集中できていいかも。家だといろんな誘惑あるし」

「そういえばさ、花火とかもあるんだっけ? ストレス溜めないようにっていう先生たちの計らいで」

 3日目の夜、花火があると確かにしおりに書いてあった。

「そうそう。楽しみだよね」

「花火のときに告白したカップルはうまくいくとかって噂もあるしね」

「確かに……」

 好きな人に告白……考えただけでも心臓が壊れそうになる。わたしの心の中に思い浮かんだ顔は……。

「ところでさ……どうなったの?」

 一華は春樹君と蒼それぞれに視線を投げてからわたしの顔を見る。

「正直言うと……」

 わたしは今思っている正直な気持ちを一華に全て話した。

「そっか。じゃあ、はやく本人たちに気持ち伝えないとね」

「一華はどう思う? わたしの決断」

「いいと思う! ていうか、どういう決断したってわたしは全力で応援するから」

 一華は今日の空に浮かぶ太陽みたいな、明るさ100パーセントの笑顔をわたしに向けてくれた。