話しているとカレーが運ばれてきて、奇麗な薄緑色のそれを一口食べてみた。

「からっ」

 緑色だからと油断していたら、口の中が熱くなるほどの辛さだった。

 留衣の兄貴は笑いながら水を渡してくる。

「ありがとうございます」

 一口飲むと、それでもまだ口の中は熱い。口から火が噴き出してきそうだ。

 もやもやした気持ちを吹き飛ばしたくて、辛さを4にしたのだけれど、こんなに辛いとは想像していなかった。

「それ、食べれそう?」

「食べます。今はこの辛さがちょうどいいです」

 額にもじわりと汗が浮きでてくる。

「青春だねえ」

 二歳しか年の離れていない留衣の兄貴は、俺よりも随分と年上かのような涼しい顔をしてカレーを食べた。

 まだ温かいナンにカレーをつけて食べると辛さがまだましになる。

「辛い(からい)と辛い(つらい)って同じ漢字ですよね」

「まあ確かにな」

「ちなみに俺は今、どっちもです」

 留衣の兄貴の口にカレーを運ぼうとしていた手が止まり、スプーンからカレーがぽたぽたと落ちていく。

「まあ……仕方ない」

「仕方ないですけど……。まあ、俺が蒔いた種だし。でも……やっぱ辛いっすよ」

 そう、すべて自分がやってしまったことなのだ。

 俺が告白をしてしまったから、俺が告白を取り消すなんてことをしてしまったから。

 周囲で笑いながら話しているやつらの声が耳にはいってくると、自分がどんどんと落とされていくような気がする。

 底のない落とし穴にはまってしまって、出られないんじゃないかって恐怖さえ感じる。

「まあ、あとは留衣に任せたほうがいい。最終判断をするのははじめから留衣って決まってんだからさ」

 確かにその通りだと思った。

 俺や神山がいくらあれこれ言ったところで、どうにもならない。

「ま、今は距離置きたいなら距離置けばいいと思うわ。自分の気持ちも大切にな」

 なんて、留衣の兄貴は意外にも普通のアドバイスをくれた。