好きになっちゃ、だめでしたか?

 学校に着いて教室に行くと、留衣に「なに話してたの?」と聞かれたので「男同士の秘密の話」と言っておいた。

 今日は1学期の終業式のため授業はない。

 全校生徒集まって校長のありがたい話を聞いたり、ちょっと長めの掃除をしたり。

 今は最後の担任のありがたくない話だ。

「ってことで、夏休みは各自受けたい教科を選択してもらう。午前2、午後2、レベルもそれぞれ2段階あるから、自分でちゃんと考えて選ぶように。あと、まあ、これは息抜きのため、と言う意味合いもあるが、夏休みの途中、お盆の前辺りに勉強合宿もある。もちろん勉強することが優先だが、温泉はいったり、美味しい料理食べたり、夜は好きなようにも過ごせるから。まあ、あくまで勉強が主軸だけどな。てことで、明日からもちゃんと学校来るように。じゃあ最後に通信簿取りにこーい」

 と、教師の長い説明を受け、1学期は幕を閉じた。

 はーい、はーい、とダルそうな態度の担任から通信簿を受け取って中を見ていると、同じように受け取った留衣が席に座る。

「どうだった? 成績」

 留衣は眉を八の字にする。

「あ、うん。やっぱり体育があんまりよくないかも」

 と、口を尖らせた。

「まあ、留衣は昔から体育苦手だったもんな」

「蒼は体育でも音楽でも、一通りこなせちゃうよね。ピアノなんてすごいし」

「まあ……。恋愛だけはうまくいかねえけどな」

 つい、本心が口から漏れてしまい隣を見ると、顔を赤くして下を向いている留衣の姿が見えた。

「って、いや、違うから。その、一般的に、な。恋愛って難しいだろ?」

「も、もちろん分かってるよ。難しいよね」

 下を向く留衣の隣で、俺は通知表をうちわにして顔に風を送った。