好きになっちゃ、だめでしたか?

 駅に行き電車を待っていると、今度は神山が現れ「留衣、おはよう」とまるで俺たちがいないかのように、留衣だけを目にいれる。

 それから俺たちをようやく見て「みんなもおはよう」と言う。

 留衣は、「お、おはよう」と、さっきと同じような反応を見せた。

 矢崎は俺と神山と留衣を順番に見て、1人「ふうん」と頷いた。

 神山は俺たちのそばを離れず、なんなら留衣の隣を独占している。

 留衣も留衣で真っ赤な顔をして神山と話していて、朝から心の中はぐちゃぐちゃだ。

「いいの〜? 大野負けてるよ」

 2人から少し離れたところで、肘で俺のことを突っつきながらからかってくる。

 こんな状況がいいはずがあるわけもなく。

 だからと言って2人の間に割ってはいる勇気もない。

「告白、したんでしょ?」

「な、なんで」

 矢崎にはやっぱりなにも言わなくても全て筒抜けのようだった。

「2人の態度見てればすぐに分かるって」

「まあ、だよな……」

「でもさ、留衣がああいう態度取るってことは、意識してるってことなんじゃない? ってことは、告白はとりあえずしてよかったってことじゃん」

 意識、してる……? 俺のことを幼馴染じゃなくて男として見てくれてる?

「そ、そう?」

「そうだと思うよ。だって、意識してないとあんな風な態度にならないって。大野さ、普通にかっこいいんだから、自信持ちなよ」

 矢崎の気持ち悪い褒め言葉はほんの少しは嬉しいけれどほとんどどうでもよくて。
 
 留衣を見た。神山に対して笑っている。

 俺は走って留衣の隣に行き、「なに話してんの?」と2人の中にはいっていく。

 留衣とではなく、神山と目が合った。