好きになっちゃ、だめでしたか?

「でもさ、お兄ちゃんの敵、かっこよすぎるよね。お兄ちゃん、正直勝ち目……」

 妹は眉を下げ、無理だよねえ、と呟いている。

「神山の好きなやつが留衣で確定したわけじゃないだろ?」

「えー、本当にそう思うの? あんな顔してたのに」

 確かに、体育祭のときといい文化祭のときといい、近くにもう1人のるいがいるにも関わらず、神山は留衣のことしか見てなかった。

 神山を見ていると、勘違いで告白したなんて思えない。

 一度息を吐いてから再び紅茶を飲む。

 ずっとティバックを浸からせていたせいで、濃すぎて苦くなっている。

「よく分かんないけど、絶対留衣さんのことちゃんと好きだと思う。じゃないとあんなこと言わないよ、しかもわたしもいたのに」

「ま、まあ、だよな」

 どこかで、神山はどうせもう1人のるいが好きだからと、安心している自分がいた。

 でも多分、なんでこんなことになっているのかは分からないけれど、神山はちゃんと留衣のことが好きだ。

 留衣しか見てなくて、本気で留衣と向き合おうとしている。

「俺、勝てんの? あいつに」

 ぽろっと声が出てしまう。

 もちろんそれは隣にいるわが妹にもはっきりと聞こえたようで。

「まあ、頑張って。唯一勝てるところといったら、あの人よりも一緒にいる時間が長いこと、だよ」

 妹はだいぶ力強く俺の身体を叩いてきた。

「いや、まあ、そりゃそうだけど。つーか、痛すぎ」

 こうなったら、当たって砕けろで留衣に接するしかない、俺のことを幼馴染としてじゃなく、男として見てもらうために。