留衣を困らせたいわけじゃなかった。

 もう少しの間は自分の気持ちを伝えずに見守っているつもりだった。

 なのに勢い余って告白するなんて。

 それに最近留衣がなんとなく変わった気がする。

 前よりも少しだけよそよそしいと言うか、視線を逸らしたりするし……。

「俺、嫌われた?」

 そのとき、玄関の扉が開き「わっ」と声とともに妹が現れた。

「な、なにしてんの。こんなところで突っ立って」

「え、いや、べつに」
 
 妹の目を見て話そうとするのに、見られない。

「今、留衣さんが外でぼーっとしてて、で、お兄ちゃんがここにいて……まさか、え、まさか告」

「ちょ、やめろって、まじで」

「あー、そうなんだ、はやかったねえ、いや、遅すぎ?」

 妹にも簡単にバレてしまうあたりを考えると、矢崎にもそして神山にもすぐにバレてしまうのではないだろうか。

 とりあえず玄関からキッチンに移動して、外はだいぶ暑いというのに湯を沸かし、適当に目についた紅茶を淹れる。

 一口飲むと絡まった糸みたいになっていた気持ちが少しだけ解れ、だからと言って根本は変わらない。

 ジャージから部屋着に着替えた妹は、オレンジジュースをコップに注いで俺の隣に座る。

「で? なんて言って告白したの?」

 明らかにからかってやろうという表情を浮かべている。

「べつに、普通に、好きだって。つうか、なんでお前に話さないといけないんだよ」

「わたしだって、妹としてずっと2人のこと見守ってたんだよ?」

 と、歯を見せて笑う。