神山君の言う、『るいちゃん』って本当にわたしのことなのだろうか。

 その問いが、神山君から告白されたあとからずっと頭をぐるぐると駆け巡っている。
 
 もし本当に神山君と幼い頃に会っていたら、きっと幼少期の神山君も今と同じくらい魅力的な見た目をしているだろうし、忘れるなんてことあるのかな。

「もう、もしその神山春樹の言うるいちゃんじゃなくても、付き合ってくうちに今の留衣を好きになって貰えればいいじゃない。ね、それで問題なし」

 一華はなにも背負っていない背中を思いきり叩く。

「それって、騙してることにならないかな?」

「なに言ってんの。本当に留衣が忘れてるだけかもしれないでしょ?」

「んん、まあ確かに」

「とにかく、他の人にとられる前にさっさと告白の返事しちゃいなさい! うちの学校であの人よりかっこいい人は多分いないはずだから」

「もう、顔だけ?」

「とりあえずは、顔」

 と言って一華は笑った。

「でももちろん、中身だって素敵だと思うよ? ま、これも見た目からの判断だけど」

「もう、結局見た目」

「いいのいいの。もし嫌なら別れることだってできるんだから」

 一華は再び、わたしを前進させるように背中を強く叩いた。