文化祭から2週間、蒼のことや春樹君のことも悩んでいたけれどそれ以上に試験勉強に追われ、今日ようやく3日間の期末試験を終えた。

 さすが進学校、テストのレベルも中学までのものとは全然違い、途中何度も挫折仕様になった。

 試験終了後の教室は開放感で満たされている。

 ここ数日元気のなかったクラスメイトは、水をもらった植物のように生き返っている。

 わたしは手を強く握って、春樹君の元へ行く。

「あ、あの。今日、これから大丈夫かな?」

 クラスメイトがわたしのことをちらちらと見ている。

 春樹君の沈黙に、心が押しつぶされそうだ

 春樹君、今なにを考えてるの?
 
 数秒後「うん、大丈夫だよ」と言う、春樹君の優しい声が聞こえてきた。

「ありがとう」

「お昼でも食べながらにする?」
 
 試験は午前中に終わり、午後は特になにもないので部活がないわたしは帰るばかりだった。

「う、うん」

「じゃあ、行こっか」

 背中にクラスメイトの視線を感じながら、春樹君に続いて教室を出た。

 なにを話したらいいのか分からず、沈黙の時間が流れる。

 隣に春樹君がいるだけなのに、

「試験、どうだった?」

 春樹君は靴を履き替えながら訊いてくる。それに、微笑んでくれる。

「あ、うん、なんとか」

 なのにわたしは、引き攣った笑顔しか作り出せない。

「なんか食べたいものある? 留衣が食べたいものならなんでも」

 まただ、名前を呼ばれただけで心臓が大きく跳ねて。

「な、なんでも」

春樹君は、じゃあ、試験も終わったことだし、思い切り食べられるところ行こっか、と言う。

「う、うん。どこでも」

 駅まで行き電車に乗り、家の最寄りの駅で降りると、今人気のハンバーガー屋へと来る。

 平日だからか人はあまりいなくて、ちょうど壁に囲まれた席に座ることができた。