好きになっちゃ、だめでしたか?

 連れてこられたカフェはいかにもわたし好みのカフェで、蒼はメニューを指差し「お、留衣の好きなオムライスある」と笑いかけてきた。

「本当だね」

 ちらっと蒼の顔を見るけれど、直視はできない。

 カフェのテーブルは小さくて、一緒にメニューを見ていると頭がぶつかりそうになる。

 今までどんなに近くにいてもわたしの心臓は正常だった。けれど今は春樹君といるときと同じくらいにうるさい。

「神山のこと見るの、まだつらい?」

「え、あ……」

 春樹君のことよりも蒼のことで頭はいっぱいだよ。思っていることを蒼に言えるはずもなく。

「ちょっとね。あ、でも……るいさんが、告白して、フラれたんだって」

「え? フラれた?」

「わざわざ報告してくれて。なんで、かな? 絶対春樹君、るいさんのこと好きだと思ったのに」

 るいさんがフラれる未来なんて想像もしていなかった。

「俺もそれは分かんないけど……でも、こんなこと言うと混乱させるかもしれないけど、体育祭のとき、留衣のこと諦めないって言われたよ俺」

 そう話す蒼の表情は今までに見たことないくらい儚げで、桜みたいに散ってしまいそうだった。

「蒼、は、どう思う?」

 今のわたしはおかしい。今はきっと春樹君の言葉に喜ぶべきところなのに、気になるのは蒼のことだ。

「どう、って?」

 ほら、蒼が困った顔をしてこっちを見ている。

「その……」

「俺は、留衣が幸せならそれでいいよ」

 蒼は力なく笑った。好きだ、と言われているような気がした。

 蒼の言葉を聞いた瞬間、切なさが溢れてきて目の付近が熱くなってくるのを感じた。

 なんでかな、蒼はわたしの幸せを願ってくれているのに。

「蒼は、優しいね」

「いつもだろ?」

「そうだった?」

 わたしは無理やり頬を上げて笑う。春樹君のことも、蒼のことも、どうしたらいいのか分からなくなった。