好きになっちゃ、だめでしたか?

 まだ空はほんのりと明るいけれど、校庭の真ん中では火が燃えている。

 火はオレンジ色で、空の色とちょうどいい具合だった。

 生徒たちはそれぞれ、なにかを食べながら、とか、話をしながら火を見ている。中にはカップルで見ている人たちもいた。

 そのとき「留衣さん、いいかな」と呼ばれ見てみると、るいさんがいた。

「待ってる」

 と一華に背中を押され、るいさんのあとについていく。

 校庭の端っこ、キャンプファイヤーの火がぎりぎり届くくらいのところでるいさんは歩くのを止めた。

「春樹君にフラれたの」

 るいさんはわたしのほうを見ない。少しだけ、声が揺れている。

「え?」

「ただ、それだけ伝えたくて」

「え、でも、どうして」

「それは、留衣さんがちゃんと春樹君から話聞かないとだめだと思う。本当は言わないつもりだったけど……。なんとなく伝えたくて。じゃあ、ね」

 るいさんはわたしには顔を向けずすぐにキャンプファイヤーのほうに戻って行ってしまう。

 少しだけ見えた表情は、まるで自分を見ているようだと思った。

 一人になった今、るいさんの言った言葉を頭の中で繰り返す。春樹君に、フラれたの。

 春樹君が……るいさんをフった? でも、どうして?

 だって春樹君の初恋の相手は絶対にるいさんなのに。絶対に春樹君はるいさんのことが好きで、わたしには間違えて告白したはずなのに。

 意味が分からなかった。火がゆらゆらと燃えているのを見ていると、自分の気持ちも揺れているように感じる。

 さっきの、春樹君の表情は? まるでわたしに行ってほしくないと言っているような……。

 一華のところに戻ると身体から力が抜けて、地面にそのまま座ってしまった。

「え、留衣。どうしたの?」

「なんか……よく分からなくなって」

 一華もわたしの隣に座る。

「よく、分からない?」

「あ、えっと……。ううん、なんでもない。その、ハンカチ、をね。貸してたの。それ返してもらっただけ」

「そっか」

 一華は多分嘘だと気付いているけど、それ以上訊ねてこようとはしなかった。