「で、なにがあったのよ?」

 帰宅途中、観察眼の鋭い一華に捕まったら最後。

 逃げられるわけもなく。

「あのね、神山君に告白された」

「ああ、告白……って、告白!? しかも神山春樹に!?」

 盛大な声で電車の中で彼の名前を口にする一華の背中を思わず叩く。

「って、ごめん。え、なんで? 全然話が読めないんだけど」

「あのね、なんか幼い頃の初恋の人らしいの、わたしが。それで、ずっと好きで」

「へえ、留衣やるじゃん」

「でも、わたし全然記憶がないの。蒼とずっと一緒に遊んでた記憶ならあるんだけど、神山君みたいな人と遊んだ記憶がなくて。もしかしたら、別の人かも」

「でも、本人が留衣だって言うならいいんじゃない? で、なんて返事したの?」

「えっと、まだしてなくて。考えて欲しいって」

 あのときの神山君の表情からは、ふざけた様子なんて僅かでも感じ取られなかった。

 必死に自分の思いをぶつけてきて、だからこそわたしもちゃんと返事をしなきゃなって思って。

 きっと、とても大切な思いのはずだから。

「いいじゃん、付き合ったら絶対留衣、神山春樹のこと好きになると思う。あの顔だし。なんか優しい雰囲気出してるし?」

「そ、そうだけど……」