「それじゃ、行ってきます。」



玄関の戸を開けようとすると、ものすごい階段をかけ下る音がした。



「日向っ、待ってくれ。行かないでくれ。頼む。」



思わず後退りしてしまった。て言うか、もう行かないと。今日は、待ちに待った入学式。



なぜ、兄がこんなにも引き留めるのかと言うと。



「寮生活なんて聞いてないぞ。」
というわけだ。



私が今日から通う高校は、兄の通っている学校ではないのだから。



「こら、晴人(はると)。日向は私の親友の会社のところに協力をしてくれるのよ。」



「朝から、うるさいぞ。」



「父さん、日向が寮で男と3年間過ごすなんてダメに決まっているだろう。しかも、システムが選んだ男だと。」



「そこのところは大丈夫だ。説明会で、寮でよからぬことをすると警報が鳴るらしい。安心して、送り出せるぞ。しかも、七海学園では私の友人の夫妻がやっているんだ、うまくやってくれるだろう。それよりも、日向。楽しんでくるんだぞ。」



「うふふっ、初(はじめ)ったら、昨日の夜大泣きだったのよ。」



「えっ、お父さんそんなことで泣いてたの!」



知らなかった。お父さんが私のために涙を流していたなんて。



「そんなことってなんだ。次に会えるのは長期休みなんだぞ。やっぱり今からでも晴人の学校に。」



「お父さん!私が行きたい学校は七海学園なの。」