「頭いた……」

 成瀬さんと頭をぶつけてから一週間ほど経ったけど、未だに頭痛は治らない。

「葵、今日それ何回目? 病院行った方がいいんじゃない?」

「いや。おかしいと思って病院に行ったんだけど、特に異常はないからストレスだろうで片付けられちゃって……」

「何それ。そんなに何回も痛むなら、絶対何かあるに決まってるのに」

 全く伊織の言う通りだ。
 
 ここ数日、私は原因不明の偏頭痛にずっと悩まされてきた。
 痛みは一回につき大体五秒から十秒くらいの短い時間。

 だけど、とにかく頻度が凄まじい。

 カウンターを使って数えてみたところ、一日につき五十回を優に超える程の回数で、さすがに面食らってしまった。
 
 ただでさえ気分の上がらない毎日を過ごしているのに、これ以上悩ませないでくれとも思う。

「とにかく、早く治ると良いね。もうすぐ体育祭だし」

 心の底から心配。だと言わんばかりな表情を浮かべて、私の両手を握ってくる伊織。

 伊織のこういう、優しい一面を見る度に、高校に入学して最初の友達が伊織で良かったなと思う。

 初めて会話を交わして間もない頃から、二ヶ月だった現在まで、伊織はずっと偽りのない思いやりを私に向けてくれたから。
 
 ……真奈の件があったから、失う怖さも大きいんだけど。

 もし伊織に何かしらの問題が立ちはだかった時、今度こそは私が手を差し伸べてあげないといけない。

 そんな責任が、ある気がする。