君の甘い笑顔に落とされたい。


私の小さな声が、音楽室に響いた。
久世くんが不思議そうに首を傾げて、私は、桃ちゃんのピンをそっと握りしめた。

違うの、久世くん。
私、嘘ついてたの。



「……椎名くんじゃ、ない」
「なに?」

「私の好きな人は、椎名くんじゃないの」
「……」



あの時、教室でおまじないをしてた時、
久世くんに見られて、私咄嗟に嘘ついた。



「──じゃあ、花戸さんの好きな人ってだれ」



時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえた。

このまま、久世くんに本当のことを伝える?
私の好きな人は久世くんですって、言うべき?

でも、100%断られるに決まってる。
最初から、私の片想いは失恋確定。

だったら、久世くんには伝えずに、このままたまに話すクラスメイトとして過ごした方がきっと幸せ……