君の甘い笑顔に落とされたい。


「(もたない……っ、心臓がっ!)」


バッと久世くんから離れて、ジャージの上から胸を抑える。
だ、大丈夫?私の心臓、ちゃんと動いてる?

あぁどうしようっ、久世くんのことが恥ずかしくて見れない……!



「ごめんなさいっ、あの、ほんと……あ!手!汚れてないですかっ」
「……」
「これっ!ハンカチ!もし汚れてたら使ってくださ──」



ザッ、と足音が聞こえて、視界の端に久世くんのスニーカーが見えた。
と、思ったその時。


「……なんだ、泣いてんのかと思ったわ」
「っ、な……」


私の顔を覗き込んだ久世くんと、数十センチの距離でぱっちりと目があった。

こんな距離、普通じゃ考えられないから。
そう、普通のことなんかじゃないから。