「あはは……よく見てるんだね、私のこと……」
「まぁね。」
冗談で言った言葉に、真面目な声音で返された。
太陽みたいに明るく笑う椎名くんは、不意に大人っぽくなる。
知っている人なのに知らない人みたいで、少し、ドキッとしてしまう。
「だから分かるよ。花戸さんが泣くの我慢してることも」
「……」
久世くんの笑った顔と、あの時の困ったような表情、そしてさっきの教室での言葉。
色んなことが頭の中に浮かんでは消えて、気づいたら、ポロッと涙がこぼれ落ちていた。
拭っても拭っても、涙は止まらない。
「っごめ……なんでもないから、」
……久世くんのことは、諦めたほうがいいってわかってる。
もう、好きっていう気持ちは忘れた方がいいってわかってる。

