君の甘い笑顔に落とされたい。




「──柚琉となんかあった?」


文化祭の準備期間、看板のペンキを塗っていると椎名くんに話しかけられた。


「つーかごめんね、看板作んの廊下でさせちゃって」


「教室だと匂いこもっちゃうからさ」と、そう続けながら椎名くんは私の隣にしゃがみ込む。

文化祭まであと3日、どこのクラスも皆んな張り切って準備に取りかかっていた。

やらないといけないことは多いけど、久世くんのことを考えなくて済むから、私にとってはありがたかった。


「柚琉と花戸さん、前より話さなくなったなーと思って」
「そ、そうかな……」


たしかに、椎名くんの言うとおり、夏休みが明けてから一言も話してない。

ふとした時に目が合うことはあるけど、すぐに私から逸らしてしまうから、
なんとなく気まずい空気は流れている……と思う。