君の甘い笑顔に落とされたい。


「また誘うよ。それじゃ」


優しく笑った椎名くんの後ろ姿を見つめる。
中身まで優しいな、椎名くんは。

なんて、そんなことを思っていると、
自販機まで戻った椎名くんに、久世くんのグループの人たちがニヤニヤしながら何かを言っているのに気づいた。


なんだろう?
気のせいかもしれないけど、チラチラと私のことも見ているような……?


首を傾げる。
それから、ふと誰かからの視線を感じた。

……久世くんと目があって、慌てて桃ちゃんの方を向いて。


「っ、いこ、桃ちゃん」


久世くんたちに背中を向けて、教室へと戻る。

こうやって目を逸らしたり、話しかけないようにしたり……これって、逃げていることになるのかな。

そうだとしても、今の私には、久世くんと話す勇気がでない。