「……あはは、ほんとに柚琉以外はなにも考えられないって感じだ」
「も、もしかしてからかってる?」
「ぜんぜん?……ただ、」
掴んでいた手首を離し、目を伏せて椎名くんは言った。
「俺も、花戸さんのこと好きだからなー……」
「……」
遠くの方で聞こえる誰かの笑い声。
吹奏楽部の楽器の音、運動部のホイッスルの音。
椎名くんの、言葉。
「はは、なーんて……花戸さんプードルみたいじゃん。俺、犬も好きなんだよね──」
ぱっちりと、椎名くんと目が合う。
いつもの、明るい笑顔の椎名くんと。
「……っもう!からかうのは禁止だからねっ。私行くから!」
4階へと向かうために、私は階段を駆け上った。
窓に反射して見えた自分の顔を見て、恥ずかしくなってくる。

