君の甘い笑顔に落とされたい。


階段をのぼりながら、そんなことを考える。

椎名くんにはいつも優しくしてもらっているから、私もなにかお返ししたいって思うんだ、けど……?


足を止めて、後ろを振り返った。
不意に私の手首を掴んだ椎名くんがそこにいる。



「椎名くん?」
「……」

「えっと、どうかした?」



私を真っ直ぐに見上げる椎名くん。
首を傾げる私に、彼は困ったように笑った。



「……行って欲しくないなー……」



小さいけれど、はっきりと聞こえてきた言葉に瞬きを繰り返す。


「あの、私になにか用事があるんだったらなんでも言っていいよ?」
「ちがうよ。行って欲しくないんだよ、柚琉のとこ」

「えっ……あっ、そうだよね!せっかく1人になれる場所なのに私お邪魔だよね」