「俺に、会いにきてくれたのかと思った。」
言いかけていた言葉がスッと消えて、
ようやく出た言葉は、「え……?」なんていうたった一文字。
それは、いったいどういう意味なの。
そんなことを聞く暇もなく。
久世くんは掴んでいた手首を離して、代わりに私の左手をぎゅっと握った。
「……っあ、ちょっと待っ、」
ぐいっとまた引っ張られて、黒いソファの前まで連れてこられた。
肩を軽く押されて、軽いスプリング音とともに私はソファに座らされて。
「久世く、」
……私の、ただの勘違いかもしれないけれど、私を見下ろす久世くんの視線が、なんだかいつもより熱い、ような……。
「……こーやって、花戸さんが手の届くとこにいると安心する。」

