「そう。」
芯が通っていて、誰にも流されない。
正義感があって、とっても優しい。
久世くんのそういうところに憧れて、惹かれて、気づけばずっと目で追ってた。
おまじないをしてた時、茶化すこともしなく、なんなら協力しようとしてくれた。
一緒に桃ちゃんのピンを探してくれた。
中学の頃、私に勇気をくれた。
「──うん。私、やっぱりどうしたって久世くんがいい」
気づけば、呟くようにそう言っていて。
「……そっか。」
椎名くんは、小さく笑った。
なにか大事なことを飲み込んだような、
なにかを諦めたような、そういう笑顔。
椎名くん、どうしたの?
どうしてそんな顔をするの?
彼の名前を呼ぼうとした瞬間、強い風が吹いた。

