「───…栞ちゃん!昨日部活来なかったけど、どうしたの!?大丈夫?」


教室に足を踏み入れた途端、わたしに気付いた可奈が駆け寄ってくる。

明るめのミルクティーベージュのボブヘアを、今日は綺麗に外ハネにしている彼女。

彼女がわたしのそばに来ると同時に、甘い余韻を残すシャボンの香りが鼻腔をついた。


「今日、外ハネなんだ。可愛いね」


そう言うと、彼女は「ありがとう」と目を細めて嬉しそうに口角を上げた。

こういう素直なところも、彼女の魅力の一つだと思う。

しばらく頬を緩めていた彼女は、突然思い出したように顔を固くした。


「……って、そうじゃなくて!連絡もくれないし、返信もこないし。すっごく心配したんだからね?」


唇を尖らせる可奈を見て、たしかに連絡してなかったな、と思い出す。


「返信してもくれないなんて、私嫌われちゃったかと思ったんだから!」


あの後、どうやって家に帰ったのかよく覚えていない。

気付いたら一人で部屋にいて、泣き腫らした目のままベッドに倒れ込んで、そして朝を迎えていた。

スマホを構う時間なんてなかったのだ。