「なんか変な感じ」
「何がだよ」
「こうして星野と帰ってること」
すっ、と遠くに視線を流した星野は「確かにな」と呟いた。
どこまでも穏やかで、静かで、あたたかい空気。
沈黙の中でも、不思議と気まずさはなかった。
部活を休んで、こうして肩を並べて帰っている。
────紛れもなく、星野とだ。
鬱陶しいと思うことだってあるし、煩わしいと思ってしまうことだってある。
喧嘩っぽくなってしまうのは事実だし、口数が少なく、時々発せられる言葉に棘があることも知っている。
それでも、他人、と言い切ってしまうことができないのは、何故なのだろう。
その答えを知るために、わたしは彼のとなりに並んでいるのかもしれない。
「沢原、怒ってるかな」
「そりゃ、無断で休んでるんだもん。怒ってるでしょ」
「俺は一応顔出して伝えてきたから、無断じゃねーし」
その言葉に、ピタッと足を止める。