「……ねえ、わたしたちって」


わたしに合わせて、星野の足もピタリと止まる。

顔を向けた星野と、まっすぐに目が合った。


吸い込まれそうな瞳はいつだって透き通っていて、ひどく神秘的だった。

それでいて、一度捉えたら離さないような強さを奥に秘めているような。


人を惹きつける、不思議な瞳。

花を、空を、雨を、雪を綺麗だと感じるように。


……星野の瞳もまた、綺麗だ。


言葉を続けようと思ったけれど、続けられなかった。

口を開こうと思ったけれど、開けなかった。

訊こうと思ったけれど、訊けなかった。


────関係性に名前をつける必要なんて、果たしてあるだろうか。


そう思うと同時に、多分わたしは怖かったのだ。


明確に、言葉にしてしまうのが。

彼から返ってくる答えを聞くのが。


「……なんでもない」


ふるふると首を横に振って、また歩き出す。

となりで星野が「相変わらずだな」と可笑しそうに笑った。