さらさらと風が髪をさらっていく。
太陽が水平線の彼方に沈む夕暮れ時。
わたしは広大な海で、特別な人と対面している。
鮮やかな光が彼を照らし、硝子玉のような瞳の中に、鮮烈な赤が混ざる。
はじまりはいつだって、眩しさに目を細める黄昏時。
「栞」
ほのかな香りとともに、はらはらと桜が舞う。
いつか大切な人と見た雪のように白い花びらは、淡くピンクに色付いて、海色にまたひとつ色を加える。
「花びら、ついてる」
海色の瞳が少しだけ近付いて、細い腕が頭に伸びてきた。
トク、と小さな鼓動が響くと同時に、爽やかな香りが鼻腔をつく。
────ひらり。
舞い落ちた桜は、水面に浮かんでゆっくりと漂う。
海色の世界でそっと重なった影を、ただ静かに波がさらっていった。



