「本が好きな子になるようにつけた名前だと思われがちだが、本当はそれだけじゃない。……道しるべ。そういう意味を持つ名前だ」



道しるべ。


初めて知った。


栞という名前は、ずっと本に挟むあの紙切れからとった単純な名前だと。


そんな勝手な解釈をしていた。



「自分の道はもちろん、他人の進むべき道も示してあげられるような子になってほしい。大切な人や特別な人を正しい方へ導いてあげられるような芯のある女性になってほしい。そんな意味があると凪海は言っていた」


「そう、だったんだ」



思っていた何倍も深くて、丁寧に考えられた名前の由来。


あたたかい涙が頰を伝って床に落ちた。


呼ばれるたびに心があたたかくなるこの名前がわたしは好きだ。



……嬉しい。



心の中で呟いたとき、ふいにインターホンが鳴った。