「……良い友達を持ったな。大切にするんだぞ」
お父さんが言っているのはきっと可奈のことだ。
わたしのことだけじゃなくて、お父さんのことも救ってくれた───…誰よりも大切な人。
「当たり前だよ。可奈はもうとっくに、わたしの大切な人だから」
……ありがとう、可奈。
わたしたちを救ってくれて。
長い長い闇の中から引き摺り出してくれて。
「ねえお父さん……ひとつ、訊いてもいい?」
「ああ。なんだ?」
少しだけ眉を上げたお父さんに訊ねる。
「わたしの名前って、お母さんがつけてくれたって言ったよね。由来を、教えてもらえないかな」
ずっと気になっていた自分の名前の由来。
結局聞けないままお母さんとは別れ、お父さんは抜け殻状態になってしまったので、名前に秘められた本当の意味を知りたかった。