海色の世界を、君のとなりで。


「……たくさん迷惑かけて、悪かった」


「ううん……そんなこと、ない」


「栞だって寂しかったはずなのに、父さんがこんなせいで、もっと寂しい思いをさせてしまって……すまなかった」



キラキラと光る指輪をそっとなぞったお父さんは、俯いていた顔をゆっくりと上げて、わたしを見つめた。



透明な、琥珀色の瞳。


色を取り戻したその瞳は、言葉にできないくらいにとても綺麗で。


お母さんはきっと、お父さんのこの瞳が好きなのだろう。


この瞳に惹かれて結婚したのだろうと、なぜだかすぐに分かった。



お父さんの世界に、わたしという存在が再び存在した瞬間だった。


そのことが、ただひたすら嬉しくて。


我慢していた涙が、零れ落ちる。