「星野くんは言わないんですか。俺がずっと惚れてる女はお前だ、って。バスケを始めた理由はお前だよ、って」
ハッと息を呑む。
どうしてそのことを知っているのか。
「栞ちゃんがお母さんの話をしてるとき、実は教室の戸のそばにいたんです私。だから、星野くんの話も聞いちゃったんですよね」
「……昔の話だからな。あいつは覚えてねえよ」
栞は、病院で会ったことなんて覚えていない。
それは今までの言動でだいたい分かった。
初めて言葉を交わしたのは入学式の屋上、彼女の記憶ではそうなっている。
すぐに分かった。
大きくなっていても、名前を知らなくても、顔を合わせただけで記憶の子だと気付いた。



