「分かっています。栞ちゃんはそんな人じゃないって。だって、誰よりも優しい人だから」
伏し目がちに呟いた小鞠は「でも」と言葉を続ける。
「たまにはこうして弱音を吐いてもいいですか。その……一人の、ライバルとして」
「ああ」
そう返してやると、小鞠は顔を上げてまっすぐに俺を見た。
先ほどまでの表情は消え、強い光をその瞳に宿している。
「絶対に、私が勝ち取ってみせます。星野くん、いざ尋常に勝負です」
「……上等だ。受けて立つ」
その目を見つめ返す。
負けるわけないだろ、俺が。
どんな相手だって絶対に負かしてやる。
あいつの手を引くのは、この世界で俺だけだ。



