海色の世界を、君のとなりで。


高校二年生、冬。



「あいつのどこが好きなんだよ」



偶然自主練が被った、二人だけの体育館。


ボールの模様を指でなぞりながら問いかける。


すると彼女は分かりやすく頬を赤らめて、口許を緩ませた。



「……似てるんです、すごく。まっすぐで、あったかくて、安心する目が、似てるんです」


「似てるって、誰に?」


「わたしの────命の恩人です」



遠い過去をそっとなぞるように、ぽつりぽつりと呟く彼女は、視線を移して俺をまっすぐに見つめた。


すぐに壊れてしまいそうな脆い瞳の奥には、確かな強さがあって。


絶対に渡さない、という決意を秘めて、俺を捉える瞳。



「でも、それだけじゃないです。格好良さも、強さも、何もかも私にはないものばかりだから。一緒にいればいるほど惹かれていって、だめだって分かっていても抗えないんです。どう頑張っても好きだから」


「だめ?別に誰が誰を好きになろうが、だめも何もないだろ」