「お願いします。私なんかにお願いされても嫌でしょうけど、お願いします。私にはこれしかできないんです。どうか、また家族に戻ってください。栞ちゃんのお母さんもそれを望んでいるはずです。お願いします。栞ちゃんを救えるのは、栞ちゃんのお父さん、あなたしかいないんです……」
零れる涙は留まることを知らない。
可奈の悲痛な叫びが廊下に響く。
「……凪海は」
ぽつりと。
お父さんが俯いたままくぐもった声で呟く。
「子供が、大好きだった。仕事であまり家にいられない俺の代わりに、こいつの面倒を見ていた。こいつの名前も……凪海がつけたんだ」
初めて聞く話だった。
一言一句聞き逃さないように、耳に意識を集める。



