「……ごめ……ね、し……お、り」
海水が女性の身を包む寸前、小さく放たれた言葉。
口の中に水が入るのも構わず、顔を歪めながら。
目で光ったのは、海水か否か。
朦朧とする意識、脱力していく身体。
そんなわたしの手にやや強引に握らせられた────海色のブレスレット。
次の瞬間、女性は私の身体を力強く押した。
掴まれていた手が離れるその刹那。
ぼやける視界の中、わたしが捉えたのは。
安心したようにゆるりと緩んだ頬。
自分の命がなくなってしまいそうな状況にも関わらず、柔らかな眼差し。
凪のような、あたたかさ。
……生きて。
声は、聞こえていなかったと思う。
けれど、そのわずかな口の動きが、私が見た最後のものだった。



